エトルリアの微笑

夜、自動車を運転しながらNHK−FMの「FMシアター」を聞いていて、不覚にも久々に涙を流してしまった。
小説をラジオドラマにして流しているのだが、今日の題材はホセ・ルイス・サンペドロというスペインの小説家(かつ経済学者だそうな)のベストセラー小説『エトルリアの微笑』*1。舞台はイタリア・ミラノで1984年秋から翌年春。
主役である老男性(以下、じいさん。推定年齢60代前半から半ばくらい)は南イタリアイオニア海を臨むアペニン山脈南稜で羊飼いで、いささか臭いやぎの乳と50年間愛用した羊の夜の番のための毛布を手放さない人物。大戦中はパルチザンとして戦った経験もあり。癌の検査をするために、ミラノに住む息子夫婦に引き取られるところから話は始まる。北イタリアの大都会・ミラノの人の気性や風物が剛直な南イタリアの田舎者であるじいさんは気に入らない(息子夫婦込みで)が、かわいい孫や、町で出会った同じ南イタリア出身の美しい中年女性と出会っていく中で、いろいろ気付かされ、変わっていくというストーリー。筋立ては単純なのですが、パルチザンでのつらい経験を中年女性に話したり、息子と二人で話し合って彼の本当の思いなどを*2知ることで昇華されていくところになんともカタルシスを感じます。主演のじいさん役の加藤武の声が役柄に見事にマッチしているのも話に没入させられました。さすがはベテラン俳優さん。
まあ、なんといってもこんなにハッピーエンドな小説は私は知りません。それだけでも大いにおすすめかな。本で小説を読んでみたくなりました。

*1:http://www3.nhk.or.jp/hensei/program/p/20090509/001/07-2200.html

*2:ベースはイタリア南北問題(ざっといえば北は比較的豊かだが、南は特産品に欠け、しかも田舎に生まれようものなら、農夫か羊飼いかマフィアくらいしか仕事がない。あとは比較的上品な北イタリアと気性の荒い南イタリアとか。この小説でも主役のじいさんの怒った時の口の悪いこと悪いこと)。ご存じない方はネットマンガの『ヘタリア』が単純明快でわかりやすいかな。