「中国古代の建築とくらし」展を見る

久々に愛知県陶磁資料館に行ってきました。名古屋から地下鉄東山線リニモを乗り継いで最寄り駅「陶磁資料館南」で下車後、さらに炎天下を700メートル歩く…しかも道はやや殺風景で、もろに直射日光が当たる…遠いいい!そしてあちいいい!ただでさえ名古屋まで2時間かかる田舎から来なきゃならんのにい。
さて、私が目的にしたのは表題のとおり「中国古代の建築とくらし」展*1。なんでも中国の建築史を研究されていた茂木計一郎氏(東京芸術大学名誉教授)が収集した中国古代建築明器の数々をこのたび陶磁資料館に寄贈したそうで、その特別展だそうです。これらはみな有力者の墓の副葬品として収められたもので、「やきもの」で生前の生活を再現したものを収めることで、死後も同じ生活が行えるようにしたとかなんとか*2
いやまあ、さすがに私もへっぽこながら中国史専攻だった身、それは知っていましたが、これだけの量で、しかも漢代から明清に至るまでそろっているのは壮観です。それも、三層の見事な楼閣(弩を構える兵士付き!)や高床式倉庫、穀物の製粉所(作坊)、井戸や竈などが緑釉や灰陶でミニチュアライズされて見事に表現されています。高価なおままごとセットという感じもしないでもないような。豚舎もありますが、雌豚が5匹の子豚に乳をやる様子がリアルに表現され、しかも人の厠がそれに付属し、人の排泄物を豚が食べる構造になっているのがわかりました*3
なお、今日何よりも幸運だったのはちょうど学芸員氏の展示解説時間に当たったこと。一つ一つの明器の背景、構造などをわかりやすく説明してくれました。今回の展示は「ほんの少しは」知っている私でも理解が難しいところも多かったので、とてもよかったです。お膳や椅子ではなくござなどに座るという漢代の風習は、中国本土では異民族侵入などの文化混淆で廃れてしまったが、むしろ日本に伝わって残ったのでは、というお話はすごく面白かったです。ありがとうございました。次回の説明は最終日の17日だそうですが、かなりおすすめですよ。

*1:http://www.pref.aichi.jp/touji/touji4/yotei/2008/gazou/Ancient%20Chinese%20Architecture/AncientChineseArchitectureandpeople'sLifenew.htm

*2:ちょっとだけうんちくを書くと、中国人の概念では、人は死ぬとたましいである魂(こん)と肉体の魄(ぱく)に分かれる。魂は天上(たとえば聖なる山である崑崙山の上)で生活を送るが、魄は地下で生前と同じ生活を行う。そこで、魄が地下で生活できるように墓に副葬品を収めておくということのようです。今回の展示は明器が中心ですが、時に壁面に当時の生活を示した絵なども残り、当時を知る貴重な史料となります。時には張家山漢墓のように、当時の墓から超一級の文献資料が出てくることもあり、現在の中国古代史研究はなかなかに華やかです。

*3:日本でも沖縄等で現在でも一般的に行われていることです。私自身も高2のときに井上ひさし吉里吉里人』の1シーンでそれを知った時には、なんともいえない気分になりましたが、排泄物にはまだまだ栄養が残っているので、結構合理的なんですね