ウィキペディア以前のオンライン百科事典構想フロムJPN

1995年刊行の村井純著『インターネット*1』を書棚の奥から引っ張り出して10年ぶりに読み返しています。日進月歩のコンピュータの世界で12年も前の本を読んでどないすんねん?と思う方もいらっしゃるかもしれないがさにあらず。日本におけるインターネット基盤を作り上げた村井氏が*2、インターネット黎明期に、現在のネット社会をけん引するGoogleも生まれていない(Yahoo!は1995年3月に会社法人として設立されたばかり、eBayも同9月の設立)ときに、どのようにインターネットのテクノロジーと展望を語るかということに、強く興味を覚えまして。
さて、内容はといえば基本的なインターネットの仕組みや歴史などを大変にわかりやすく書いてあり、とても勉強にります。将来の予測もまるで予言のごとしで、驚くばかりです。またここに感想を書くかもしれませんが、インターネットのインフラ整備が一段落し、次の段階に進もうとしている*3現在だからこそ、読むべき本だと思いますね。
さて、気になったのは第3章「メディアとしての可能性」で、村井先生はトピックとして「インターネット百科事典」というのを挙げています。「インターネット上の百科事典というのは、(中略)、インターネットの参加者それぞれの視点での知識の体系を、それぞれの価値観に基づいてつくっていき、それを受け取る側も、自分に合った視点による知識を選びながら体系的な知識を得ていくことにできるという試み」で、慶応大学の「WIDEプロジェクト*4」という集団が当時行っていたそうです。うん?現在、「オンライン百科事典」においては少なくとも日本では、いや、欧米においてもご存じのとおりウィキペディアが良くも悪くも独り勝ちです。ウィキペディアは2000年に始まったUSA発のヌーペディア*5を源流にしているはずで、日本人が当初から関与していたとは聞いていない…。一方、WIDEプロジェクトにおける百科事典構築は1997年3月で終わってる?*6そりゃもったいなさすぎな気が。
「オンライン百科事典の歴史」も、そろそろ誰かが一旦まとめて記録しておくべき時期なのかもしれません。関係者が皆様ご健在のうちじゃないと、「歴史の謎」とやらがまた増えてしまいそうですね。結構面白そうです。
この辺の事情について少しでもご存じの方がいらしたら、ご教示くださるとうれしいです。お願いします。

*1:1995年12月出版、岩波新書

*2:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%91%E4%BA%95%E7%B4%94 ウィキペディアにも記事があるんですね。慶応SFCの先生なんだ

*3:それがWeb2.0なのかどうか断言する目は、私は残念ながら梅田望夫でも近藤淳也でもひろゆきでもないのでわかりませんw

*4:http://www.wide.ad.jp/index-j.html、なんだ、村井先生が代表なのか

*5:http://ja.wikipedia.org/wiki/Nupedia、を参照って手抜きか

*6:http://www.wide.ad.jp/project/wg/concluded/nia-j.html