コスタリカとニカラグアと日本の番組

仕事から帰宅し、食事をしながらテレビを見ると、「一秒の真実」とかいう番組*1をやっていました。現在の地球上で、特に命をめぐって一秒にどれだけのことが起きているか(例えば1秒に0.3人が飢えで亡くなっている、日本では石油を7,500リットル消費している、などなど)をテーマに番組を取り扱うものです。
そのうちの一つのテーマとして、「貧しい」ニカラグアと「豊かな」コスタリカを対比させるものがありました。なんでも(あくまで番組によれば)、ニカラグアは1980年代の社会主義革命などを伴う内戦によって国土が疲弊し、現在でも国民は困窮にあえぎ、コスタリカに出稼ぎなどして生活している人も多い。そしてその象徴としてゴミの山とその環境劣悪な中で生活する人を映し出していました。一方で、コスタリカは1948年に制定した平和憲法によって軍隊を放棄し、軍事費を国民の厚生や環境保護に回した結果、豊かな国が生まれた、と。
なんか昔聞いたことがあるなと考えたら、10年も前に大学でこんな話を聞いたことがあることを思い出しました。「平和学」とかいう講義でコスタリカを例に挙げ、軍事に使用する金をもっと福祉などに有効に振り向ければこんな素晴らしい国ができる。で、日本は今後も憲法九条を堅持し、アメリカ追随の外交を改めるべきという話でした。私の出身大学は左翼系の先生が結構強く、1990年代後半でも平然とこんな講義ができたわけですが、テレビでは専門家の先生が、世界の軍事費のうち、10兆円で食糧援助を行い、1兆円で下水道の整備を行い…などすれば世界の人たちがもっと救えるのに、と訴えていらっしゃいました。
まあ、しかしこの番組は何結局のところ何を目指してこういうコーナーを作っているのでしょうか。嘘、または言及していないことだらけ*2なのもさることながら、「世界の軍事費を有用に振り向ける」ためにはどうしたらいいと言いたいのでしょうか。そのあたりを一切具体的に語ろうとしないところが(憲法九条堅持とかアメリカ追随反対とかいうと、特定の政党を支持しているようなものですが)、一層キタナイ連中です。番組中のこのコーナーの制作者は明らかに左翼的な思想的傾向を持っているでしょうが、視聴者に何を植えつけたかったのでしょうか。ついでに局内の権力関係はいったいどうなっているのでしょうか。ある種別の興味が生まれました。

しかしまあ、左翼な皆様に理想視されるコスタリカが強固に反共親米を貫いているというのは皮肉なのか、ある種の必然なのか。

*1:http://www.tbs.co.jp/ichibyou08/onair4.html

*2:コスタリカは「軍事」力は持っていないものの、対戦車砲など重火器を有する部隊を持っており、現にニカラグアからの侵攻を撃退した実績を持ち、その「軍事」費は中米13カ国のうち、4番目でニカラグアよりはるかに多いこと。親米政権を貫いており、通算してアメリカなどから巨額の援助を受けてきたこと。主力産業であるコーヒーや砂糖のプランテーションにおいて、ニカラグア人など外国人労働者を単純労働に従事させており、国際的な搾取関係ができてしまっていること。中米の中では白人の率が突出して高く、逆に黒人率の高いニカラグア人への差別感情がどうしようもなく強いこと…などなど。問題が単純化されすぎていると感じた場合は、まずしっかり疑うことが重要だと今回改めて感じました