1943年10月31日及び11月3日

何の日かといえば、ベルリンフィルフルトヴェングラーの指揮でベートーヴェン交響曲7番を演奏した日。いうまでもなく第2次世界大戦のさなかで、東部戦線ではこの年早くに独露合わせて150万を越す戦死者を出したスターリングラードでドイツ第6軍が降伏し、さらに夏のクルスクの戦いでついにドイツの攻勢が崩れ、西でもイギリスやアメリカが反攻を企てるというまさに「滅び始めたドイツ」の時期。同盟国日本もすでに太平洋のほとんどの制海権を失いつつあり、悲惨な戦死・戦病死者が大量に出始めています。
この時期にベルリンフィルが演奏するのだから、ナチス・ドイツ国威発揚の目的もあるのでしょう。しかし、この演奏、素人耳に聞いてもすごいです。よく知らないながらフルトヴェングラーの指揮は格別なのだそうですが*1、明らかに忍び寄りつつある敗北の影の中、おそらくベルリンフィルのほうも観客のほうも家族や友人の誰かは既に戦争の犠牲となり、また未来に自分たちもそうなる可能性を多分に持った*2状況の中の演奏です。そういう先入観で聞いてしまうからいけないかもしれませんが、明らかに何かがキレた(第四楽章は指揮者の意図を超えて明らかに猛烈に走っている気がしますが)演奏で、なにか届いてくるものがあってたじろぎました。
で、こんな演奏がインターネット上のそこらへんに転がってるのがこの現代のすごさというかなんというか。まあ、YouTubeなんかにアップされてる違法ファイルと違ってこちらは著作権切れてるのでそういう問題はありませんけどね。検索すればすぐ見つかるので気になった方は探してみてくださいよ。

*1:どう「格別か」すらわたしゃ知りません

*2:1年半後にベルリンは落城し、町は廃墟となり、ソ連兵のすさまじい乱取り(前回の復習に使ってみる)にさらされた