あさま山荘事件を描く

ええと、表題だと佐々淳行原作・役所広司主演の『突入せよ! あさま山荘事件』のことかと思われるかもしれないが、そうではなく、現在は名古屋で単館上映されている『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程*1』のお話。
『突入せよ! あさま山荘事件』は警察が連合赤軍という悪をやっつける、わかりやすいプロジェクトXの親戚みたいな映画です。一方でこの作品は、左翼シンパな映画監督(若松孝二氏)が、あくまで連合赤軍からの目線で、彼らの戦いと破滅を描いています。主要な役者も坂井真紀を除けば若手の舞台俳優さん*2が中心で、撮影も手作り感あふれるものでした。
いや、でも、でも、私はこういう映画が観たかった!私は、上の世代の人が「人生で何をやってきたのか」を語ってほしいとずっと渇望して生きていました。ところが、特に団塊世代より下の人は、なかなか自分の歴史を語るということがありません。これはある種の世代間の断絶だし、言い換えれば歴史の断絶です。我々からしたら、自分が何者なのかつかむすべを一つ失うことになります。
昭和30年代から40年代半ばまでの学生運動などもまさにそうでした。すぱっと否定する人や、過剰なまでに理想視する大学の教員などは見てきましたが、きちんと「総括して」語る「大人」に出会うことはなかった。監督の若松氏は「……俺は、オトシマエをつける。真実を伝えたいんだ*3」と語っているそうですが、そういう姿勢に大きく感銘を受けました。歴史を語る、という一つの形を見せられた思いです。内容自体も実名のまま、遠慮なく、残酷なまでに登場人物たちを描写しています。若い人こそ観るべき映画です。
現在、映画は名古屋で単館上映のみで、これからほかの映画館でもポツポツと上映というところでしょうから、詳しい内容は書きません。まあ、総括を含めたその内容のすさまじさと、映画の3時間10分という長さで、映画が終わったときにはすっかりくたくたになってしまうことはうけあいですが。学生運動から連合赤軍の成立、そして総括から破滅までが、あくまで彼らの視線から描かれています。永田洋子役の役者さん(並木愛枝さん)の憎たらしさと、さすがに女優としてのオーラが他とは違う坂井真紀の使い方のうまさなどが面白かったかな。

*1:公式サイトはhttp://www.wakamatsukoji.org/index.html

*2:ちょっと調べてみると、この俳優さんがたのほとんどが自分のホームページ、ブログを持っていてびっくり。ウェブは重要なアピールのツールですね。

*3:同映画ホームページより