1カット5万円

18切符のシーズンなのもあって、彦根城跡に行ってきました。以前(8年前でした)来た時よりは多少城に詳しくなっているので、天秤櫓*1の石垣の左右の積み方の差をみて、「なんだ、幕末の積み方はしょぼいのう*2」などとほざくことができるようになりました(だからなんだという話ですが)。
さて、行ってみると石垣の周りに電気か何かの配線をめぐらせてる人がいる。何かと聞いてみれば、時代劇の撮影とのこと。NHKの『鞍馬天狗*3』とかいう作品だそうな。天秤櫓の周りは確かに見てくれがいいし、時代劇にとってはいい絵になる場所だ。撮影は我々観光客の邪魔にならないように徹底的に配慮されており*4、天秤櫓の城門をくぐるときには両側にちょんまげに二本差しのおさむらいさんがいて、少しだけ当時の気分を味わえたかしら。
とはいえ、城門のまわりにはスタッフが何人もいて、なにやかやとしゃべっている。そのうちの一人いわく、「次の大河のカット用にいいのが撮れたら一枚5万だぞ」とのことで、ああそういえば次の大河ドラマは幕末モノで井伊直弼も出てくるので、ちょっと納得。そうやって使い回すのね。ちなみに、今回の撮影は幕末がテーマの鞍馬天狗ながら、城門に置かれた提灯をみると、別の大名家のできごとのようです*5

*1:彦根城の本丸入口にある櫓、虎口となる門もここに開いている。櫓前面は空堀となっており、彦根城の最終防衛拠点といえる櫓。現在は国の重要文化財に指定されている

*2:天秤櫓は慶長8−11(1603-06)年ころの建築と考えられ、石垣は近江の石工である穴太衆による丁寧な布積み(横の横目地を一直線にした積み方)によってできている。ただし、嘉永7(1854)年の積みなおし部分があり、これは落とし積みになっている。落とし積みは石をななめに落とし込んでいく積み方で、現在もそこらじゅうの護岸やちょっとした民家でやってる積み方だが、いかんせん強度はあまりたかくなく、石垣内部を補強するなどの対策が求められる。谷積みとも。お手軽な参考はhttp://www.geocities.jp/ishizumitokushima/method.html(一般の方による吉野川の護岸についての調査ページ)など。ちなみに石垣の積み方は16世紀末から寛永(1626-49)ころにかけて各地の築城や都市建設などから一気に進歩し、その需要が止まると退化していった。現在の石工では熊本城や伊賀上野城などの高石垣を築くのはまず難しいといわれる。

*3:NHKの木曜ドラマで、2008年から放送とのこと。http://www.nhk.or.jp/drama/html_news.html#tengu(NHKホームページ)

*4:演技中の京野ことみを撮影しようとする強引な大阪おばちゃんを止めるのにスタッフが苦労していました。いや、でもこうしてじかに芸能人を見ると、確かに美人だったなあなどと無駄口

*5:ちなみに井伊家の定紋は丸に橘